こんにちは!みてわか編集部です。
私たちは重度知的障がいをともなう自閉スペクトラム症の方の支援方法についてご提案しています。
もともとこのサイトをつくろうと思ったきっかけは、ある男の子(マル君)の支援経験があったからです。
マル君はDQ10~15くらい、最重度の知的障がいがあります。
その知的障がいの重さからスケジュールをするのは難しいと言われていました。
でもそれは違います。それはただの支援する側の知識不足。
ご本人さんがみてわかるようにスケジュールを準備すれば必ずできます。
前回の解決法① 次の活動がわかるでは、次の活動が何かマル君がわかるような実物をさがしたり、作ったりしました。
今回は、この実物を使ってマル君がわかるようなスケジュールのかたちをつくっていきます。
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前回の解決法① 次の活動がわかるでは、なるべく小さな実物をさがしたり、つくったりしました。
小さな実物ならばこの後お話しする”透明のスケジュールケース”に入るからです。
ただマル君がわかる”透明ケースのスケジュール”ができるまでにはいくつか失敗もありました。
はじめになぜ他の方法で失敗したのかお話ししてから、うまくいった透明ケースのスケジュールについてご説明しようと思います。
失敗例① 箱でスケジュール
箱に実物をいれて見せる方法です。
マル君はいつも公園や散歩など外に出かける時はリュックを背負っていました。
リュック=外に出かける
とマル君はわかっていたので、外に行きたい時はリュックを持ってくることもありました。
そこで、プラスチック製の箱にリュックを入れて、スケジュールをしてみました。
まずは、次の活動だけを伝えるスケジュールです。
2つスケジュールを伝えたい場合は箱を積むこともでき、積むと上から順に取り組むことができます。
この箱スケジュール、実際にマル君に試しみてました。
リュックが置いてあれば、外に行きたいマル君は自分からリュックを取りに行きます。
そして外に行こうとママを誘います。
この様子をみると、マル君がスケジュールを理解しているように見えます。
でも実は違うんです。
これ、スケジュールっていうよりマル君にとってはただの収納。
リュックを置いてある場所がただ変わるだけ。
スケジュールの箱に置いてあっても、いつものリュック置場に置いてあっても、そこからリュックを持っていって外に行こうとします。
スケジュールになっているから今から行けるんだ!とわかっている様子もみられないし。
収納場所にあるってことは今は外には行けないんだな。とわかっている様子もみられません。
スケジュールがマル君に伝わっている手応えがまったくない。
これでは何か違います。
失敗例② 3段ボックスでスケジュール
3段ボックスに実物をいれて見せる方法です。これだと3つのスケジュールを見やすく上から順に並べることができます。
でもこれ、手応えは箱スケジュールの時とあまりかわりませんでした。
やっぱりマル君にとってはただの収納。収納場所が変わっただけ。
上から順番にとる!?
また、『上から順番』がわからないマル君は、好きなものから取っていきます。
まぁ、あたりまえですよね。好きなものから取りたくなるマル君の気持ちもわかります。
気になっちゃうから隠す!?
先のスケジュールが見えて刺激になるなら隠せばいいというアドバイスをもらったこともありました。2つ目3つ目の実物に布をかけて隠します。
マル君は気にならなくなり、うまくいくときも確かにあります。
でも、布がかかっていることに気づくとマル君は布をよけて確認します。好きなものなら手に取ります。布があってもなくても同じように感じました。
それにこれ、そもそもですよ。先のスケジュールを見せて知らせたいのに隠すって…。
違和感ありませんか??本末転倒というか。
あまりいい案だとは思えませんでした。
準備が面倒
もうひとつ、うまくいかなかった理由があります。
それは準備の面倒さです。
これは支援する側の問題です。
「マル君のためだからそれくらい頑張ってよ!」と言われてしまいそうですが、支援する側が準備しやすいというのは支援を続けていくためにとっても大切なことだと思います。
実物を3段ボックスに入れるだけというのは簡単そうですが、実物を置いてある場所がバラバラなので準備するのが実は面倒です。
たとえば『ごはん』→『着替え』→『外に行く』というスケジュールをたてるとします。
実物がそれぞれ、
・ごはん=食器
・着替え=服
・外に行く=リュック
だとすると、スケジュールをするためにそれぞれ、
・食器棚まで食器を取りに行き、
・クローゼットまで服を取りに行き、
・リュックも収納場所まで取りに行かなければなりません。
ラミネートカードのスケジュールなら一気にペタペタ貼れるのに、実物だと手間がかかりますよね。
支援する側が大変だと毎日続けるのは難しいです。
もちろん、近くに全部収納するように工夫したり、面倒に感じない方には全く問題ありません。
透明ケースでスケジュール
ここからが本題です。
冒頭でもお話ししましたが、小さい実物にしたのはこの透明のスケジュールケースにいれるためです。
スケジュールカードのかわりにこの透明のスケジュールケースを使ってスケジュールをします。
透明のスケジュールケースをならべる
透明のスケジュールケースを左の写真のように上から順に並べるだけでもいいですし、
順番をもっと強調するために右の写真のように上から順に色で区切ってもいいかもしれません。
右の写真のような独特なデザインの方が、園や学校・事業所などではマル君にはわかりやすいです。
このような独特なデザインなら、他の方のスケジュールがたくさんあるような場所でも、マル君は自分のスケジュールがどれかパッと見てわかります。
写真も貼る
また、実物を入れた透明ケースには写真も貼っておきます。
この時の写真は必ずしもケースの中にいれる実物の写真でなくても大丈夫です。
ポイントは
・マル君の視界から見えるアングルで、
・その活動でマル君がよく見ているもの(好きなもの)を
写真に撮ることです。これはマル君が写真を見て活動を思い浮かべることができるようにするためです。
このように写真と実物どちらも見えるようにしておくとマル君が実物だけではなく写真でも活動を理解できるようになるかもしれません。
実際にマル君は写真だけでも理解できるようになっていきました。
写真でもわかるようになる理由を簡単に説明します。↓
マル君ははじめは実物だけを見て活動がわかります。
貼ってある写真はただのケースの柄のようなものです。
でも同じ写真が貼ってあるケースを毎回同じ活動で使っているうちに実物=活動(実物をみて活動が思い浮かぶ)だけだったのが、実物=写真=活動(実物をみれば写真も活動も思い浮かぶし、写真をみれば実物も活動も思い浮かぶ)になってくるのです。
こうして活動と写真がマル君の頭の中で結び付けば、実物がなくても写真を見ただけで活動が思い浮かぶようになります。
これは、視覚優位の自閉症さんにはぴったりの覚え方なのです。
透明ケースのスケジュールのいいところは、
メリット
- 実物でスケジュールをはじめられる
- スペースが小さくてすむ
- いずれ写真に切りかえていくための練習ができる
- 準備が簡単
- 旅行先などにも持ち運べる
『スペースが小さくてすむ』と、家庭・園や学校・事業所などいろいろな場所で始めやすくなります。
『写真に切りかえるための練習』というのは実物のスケジュールをはじめる時には必ず考えておいた方がいいことです。
自閉症の方は見てわかることはどんどん覚えていかれます。というかそれが自閉症の方の学習するスタイルです。
『この子は実物しかわからないから』などとご家族や支援者さんでご本人さんの可能性を狭めないでください。
きっと実物しかわからないのではなくて、わかるような教え方をご家族や支援者さんができていないだけです。
まとめ
さて、スケジュールの形ができあがってました。
でもこれだけではまだまだマル君はスケジュールを使いこなせません。
次に、スケジュールを確認したあとに解決法③活動場所まで移動するについてお話していきます。